同じ日に発売された自転車マンガで…

7月9日、『アオバ自転車店』4巻と、『じてんしゃ日記2008』が発売されました。

4785929898アオバ自転車店 4巻 (4) (ヤングキングコミックス)
宮尾 岳
少年画報社 2008-07-09

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4152089350じてんしゃ日記2008
高千穂 遙
早川書房 2008-07-09

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アオバ自転車店』は、自転車専門店「アオバ自転車店」を中心に、自転車と人の関わりを描いた、宮尾岳さんの漫画です。フィクション作品ですが、実在する人物や自転車、メーカー等が登場することもあります。
『じてんしゃ日記2008』は、SF作家・高千穂遙さんがマンガ家の一本木蛮さんに、「スポーツ、ホビーとしての自転車」をレクチャーする様子をマンガ化した作品『じてんしゃ日記』の続編です。高千穂さんのコラムや解説も豊富にあり、実用書としても楽しめます。


道路交通法改正に関して、両作とも「3人乗り自転車」としてランドウォーカーに触れていたのですが、そのスタンスの違いが面白いなぁと感じたので記しておきます。

ランドウォーカー株式会社
http://www.landwalker.co.jp/


アオバ自転車店』4巻では、第6・7・8話が「3人乗り自転車」についてのお話で、単行本の3分の1以上のページを割いています。ネタバレになってはいけないので詳しくは説明しませんが、独立懸架式三輪自転車「ランドウォーカー」の開発過程をメインにしたお話になっています。


その中で、2002年の段階で12万5000円もするランドウォーカーの価格に、マンガのキャラクターであるアオバ自転車店の店主(工一さん)が苦言を呈します。「奥様方は買わない。いえ買えません」と。いくら素晴らしいものでも、10万円を超えた自転車を購入する可能性はゼロに近いと理由を説明します。
そして2005年、ランドウォーカー量販品「コアラ」と「ポニー」が6万3000円だと言われ、重要なパーツの品質を落とさず半額以下になった定価に、工一さんは「……信じられない」と言葉を失うほど感動します。


一方の『じてんしゃ日記2008』では、「その12 おれのじてんしゃ道‐あすなろ編‐」でランドウォーカーが登場します。こちらで取り上げられているのは、4輪タイプのランドウォーカー「かるがも」です(『アオバ自転車店』にも「かるがも」は登場します)。


この話では、道路交通法の改正で表面化してきた「自転車はどこを走るべきか」という問題をテーマに、実際に“自転車乗り”がどう対処したらいいのか、具体的な提言がなされています。
内容は「3人乗り自転車」にも及び、テレビで「かるがも」を見た高千穂さんは、「す…すごい…!!」と驚嘆。安全性に優れた設計に感心するのですが、あとに続くのが下記のやりとりです。(注意:7/9現在、「かるがも」の販売価格は正式発表されていません)

高千穂さん「但し、お値段が7万円くらい」
一本木さん「買わない!! 賢い主婦は買わない!!」

もちろん両方の作品とも、“価格”以外の面からもランドウォーカーをきちんと考察されています。その上で(「コアラ」「ポニー」と「かるがも」の違いがあるものの)、6〜7万円というランドウォーカーの価格に対して、一方はその企業努力を称賛し、もう一方は「購入するような主婦は賢くない」と言っているのです。
どちらに書かれていることもよく分かりますし、どちらの意見も間違っているとは思いません。が、私個人がどちら寄りなのか強いて言えば、『アオバ自転車店』の工一さんに近いです。

同じ日に発売された「自転車をテーマにした漫画」で、同じ自転車(ランドウォーカー)について描かれているのに、こんな違いがあります。でも宮尾岳さんも高千穂遥さんも一本木蛮さんも、みんな「自転車好き」と呼ばれる人たちなんです。
大きな違いのような、小さな違いのような。もしかしたら、ここに“何か”のヒントが隠されているような、そんな気がします。
(山科)