ルサンチマン

ルサンチマン 4 (4) (ビッグコミックス)

ルサンチマン 4 (4) (ビッグコミックス)

ボーイズ・オン・ザ・ラン」も絶好調の花沢健吾が、喪男界にその名を轟かした作品だ。

「いーかげん目を覚ませ!!
現実を直視しろ。おれ達にはもう仮想現実しかないんだ」

涙をこぼして語る越後の、レトリックめいた魂の叫びが胸に突き刺さる。

今よりちょっとだけ未来の2015年、コンピュータネットワーク内の仮想現実技術だけが異常に進化した世界。 主人公はデブ、ハゲ、メガネの30男、たくろー。どうしようもなく女性にもてない彼は、友人に勧められたバーチャルリアリティの恋愛ゲーム(人工知能との恋愛)にのめり込んでいく。「ダメ人間版マトリックス」ともいえる世界に溺れるたくろーやその他の大勢のプレイヤーたち。彼らは現実に居場所を見つけられずに、仮想現実(アンリアル)に逃げ込んできた悲しさ漂う人間達ばかりだ。

最終的には、現実の恋人を捨て去り、アンリアルの恋人を選んでしまう主人公。普通に考えればありえない選択。
でも、僕には「弱い人間だ」と彼を責めたり、「バカな奴だ」と笑ったりはできなかった……

もてないオタクをテーマにして話題になった「電車男」は、常に「現実に向き合え!現実世界で行動しろ!」と叱咤激励されて前進していくが、それとは真逆にこの作品では、主人公はどんどんと現実世界からの退却を行う。

(あえて言い切るが)「全ての男」がシンパシーを何故か感じてしまう、哀しくて切なくて、醜くも美しい物語。

電波男」著者の本田透氏曰く、喪男もてない男)文学の最高峰。
何か感じた人は、是非読んでください。作者としては決して恵まれた終わり方ではなかったかもしれないが、すごくギリギリのラインで希望を感じさせるラストの展開、涙なしには読めません。

こんなに思い入れするのは、私が喪男だからなんでしょうねぇ……