日本の実話

日本の実話

日本の実話

雑誌「マガジン・ウォー」に掲載された河井克夫氏の作品集。基本は「実録エロ体験」なのだが、まったくエロさは感じられずちっともうらやましくない体験談の嵐。TVディレクターがホテヘルの隠し撮りを企んだら、ばれて暴力団に監禁されるとか、援交サークル作ったら女に金を持ち逃げされるとか、たまたま行ったキャバクラの女の子が歌手志望で、大道具の自分がなぜか延々つきまとわれるとか……なんとも言えぬ情けなさ、悲しさ、そして間抜けさ。悲哀に満ちた体験談ばかり。

解説の呉智英氏も書いていますが、本当のようで作り話っぽく、作り話のようで本当っぽい。そんなギリギリのラインのお話が連なっている。
「マガジン・ウォー」誌自体が、当時ブームだった「裏モノ」系の雑誌であったので、その中の「エロ体験談」漫画の路線を狙ったのでしょうが、これが意外な方向に。
山崎大紀氏の風俗体験ものは、あそこまでいくと商売の匂いしかしないし、成田アキラ氏の作品は「なんかそこから学び取っちゃおう」みたいに考える自分が恥ずかしいし、平口広美氏はそのパワーに胃がもたれるんだよなぁ、なんてことを勝手に思っていたワタクシにしてみれば、この「日本の実話」のけだるさというか、まったく役に立たないし教訓にもならない感じがしっくりきたり。

出てくる男も女も「ふつー」の最底辺の人たちばかり。だから、誰も憎めない。ああ、これが「日本の実話」なのね。