夜、海へ還るバス

森下裕美さん話題の新刊。
自分がレズビアンではないかと悩む女性の物語。

夜、海へ還るバス (アクションコミックス) (アクションコミックス) 森下 裕美 双葉社 2008-04-28 by G-Tools

やさしい男性と婚約した夏子。
幸せ絶頂のはずだが、心にひっかかるモノがある。
夏子は、男性とセックスする夢は見たことがない。しかし女性との夢は見る
「私は、レズかもしれない」と思い、自分の気持ちを確かめようとする。

『少年アシベ』や『ここだけのふたり!!』で森下裕美さんを知っている人だけでなく、
『大阪ハムレット』を読んだ人でも戸惑うかもしれない作品。

レズビアンではないかと悩み、女性と関係を持とうと悩むというのが、
リアルであるのかどうなのかは、わたし自身にはわからないけれど、
妙なウソっぽさと、妙なリアルさが同居する作品だと感じます。

ありそうで、なさそうで、でもありそう。みたいな、おさまりの悪い感じ。
実録のような、でもSFみたいな。

リアルさの一端を担うのは、リアル過ぎる関西弁。
自分自身が関西人だからかもしれませんが、
実際に町の人々が使っているような、リアルな関西弁で描かれた
マンガや小説には、不思議なリアルさを感じてしまいます。

「こんな関西弁、誰も使わへんで」と思わせるような、うそ臭い関西弁ではダメ。
友達同士が話しているような本当の関西弁でないといけないから難しい。
いろいろ考えてみましたが、リアルな関西弁のマンガって、
『じゃりン子チエ』くらいしか思い出せません。
違和感のある関西弁のマンガはいくらでも思い出せるのですが。

じゃりン子チエ (1) (双葉文庫―名作シリーズ) はるき 悦巳 双葉社 1998-09 by G-Tools

若い子の関西弁では『あずまんが大王』の春日歩（大阪）の関西弁もいい感じ。
口数があまり多くないので、ちゃんとは判断できませんが、
あまり違和感は感じません。

あずまんが大王 (1) あずま きよひこ メディアワークス 2000-02 by G-Tools

郷田マモラさんの関西弁全般も、リアルに感じます。

モリのアサガオ 1―新人刑務官と或る死刑囚の物語 (1) (アクションコミックス) 郷田 マモラ 双葉社 2004-12-06 by G-Tools

『ナニワ金融道』とか『ミナミの帝王』みたいな関西弁を使う人とは会ったことがありません。
街金とか金貸しとかの人と会ったことがありませんからアレですが、
きっといないと思います「ワテ」とか言わないですし。
きっと“えげつない関西人”という「記号」的な意味での関西弁だと思います。

森下裕美さんが奈良出身だからこその関西弁だとは思いますが、
関西人作家ならだれでもいいかというと、そうでもない気もします。

そういえば『大阪ハムレット』は実写化するそうですが、
うそ臭い関西弁にはならないで欲しいものです。

大阪ハムレット (1) (ACTION COMICS) 森下 裕美 双葉社 2006-05-12 by G-Tools

（メカタ）