自転車行政の大いなる勘違い その2


先日に引き続き、疋田智氏の『自転車の安全鉄則』を読んで
考えた、自転車行政の勘違いについて。


前回の記事はコチラ
自転車行政の大いなる勘違い その1


自転車の安全鉄則 (朝日新書)

自転車の安全鉄則 (朝日新書)


あ、そうそう、これももう一度。
自転車と滋賀を絡めた企画や本
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行政と自転車乗りの間に横たわる大きなズレ。
自転車レーンの設置が各地で推進されているが、
現状のままでは誰も幸せになれそうもない…… という話。


どんな自転車レーンが危ないのか、
いくつもの問題があるのだけれど、一番の問題は
歩道を区切って自転車レーンを作っている
ということである。


専用レーンを用意して「自転車はソコを走るべし」というのはいい。
大歓迎。歩行者も自転車も、自動車もみんな嬉しい。


でも、自転車は基本は車両(交通強者の立場)。
歩道とは、交通弱者(歩行者、車椅子、ベビーカーなど)の聖域であるべき。
そんな人々が安心して歩ける場所でなければならない。


なので、交通弱者に配慮するなら、
自転車は車道に下ろさなければならないはず。


それなのに、ほとんどの自転車レーンは歩道を塗り分けて
「歩行者」「自転車」と区切ったもの(南草津駅前近辺などもそう)。


滋賀だけでなく、京都にも(御池通りなど)歩道塗りわけ系の自転車レーンはたくさんある。
しかし、歩行者が歩行者レーンを歩き、自転車が自転車レーンを通っているかといえば、
「誰も守ってない」というのが現状だ。


自覚的な問題もあるが、立ち並ぶお店に出入りする必要性や、
横断歩道を渡りたいという問題、
街路樹やバス停、ベンチや路上駐車の車、放置自転車、お店の看板などの
遮蔽物が専用レーンをふさいでいるために、はみ出さざるを得ないという問題もある。



「出てきたり、消えたり」する自転車レーンなら無いのと同じだし、
スピードを出しがちな可能性を考えるとかえって危ないのではないだろうか。


また歩道を塗り分けたところで、あそこは歩道だから、
(法律的にも)自転車に優先権はない。
なので、歩行者が自転車側を歩いていても、
押しのけて走るなどはもってのほかともいえる。


せっかく自転車が安全に快適に走るというための自転車道なのに……
まったく意味を成していないのだ。こんなものなら無い方がいい。




では車道にあればいいのか?


車道を区切って自転車レーンを作っていても、問題をはらんでいるものは多い。
そのひとつは「対面走行」という問題。


車道を走る場合、自転車は左側通行
意外と守っていない人も多く、事故の大きな原因にもなっているが、車道を右側通行するのは厳禁。
後ろから車に追い抜かされるのは不安なんて声もあるけれど、
明らかに自動車と対面する方が事故の重大性、危険性が増す。


車道を区切って自転車レーンを作った場合、そこは一方通行(左側通行)であるべきだと、個人的には思う。
対面走行を許すと、交差点等が危険で仕方ないだけでなく、
大抵の自転車レーンは行き違えるほど広くないという問題もある。
自転車同士の「正面衝突」は一番避けなければならない事故だからとも思う。


欧米でもドイツやオランダ、デンマークなど「自転車先進国」の自転車レーンは片側通行だ。
日本も自転車の利用を促進したいと思うなら、先進国に学ぶべきでは?と思う。


対面通行が便利という気持ちも分かる。
向かい側に行くために、大回りしなければならないのが面倒だという声も理解できる。
しかし自動車やオートバイが、「遠回りだから」といって逆走してきたら、どうだろう。
そんな馬鹿なことをする運転手は、いないはず(であってほしい)。
自転車も車両。同じように考えるべきではないだろうか。
遠回りができないならば、自転車を押して歩道をあるくこともできるのだから。


「日本の自転車マネジメントを見ていると法治国家の体をなしていない」と評した
外国メディアの話を読んで、自分は恥ずかしく思う。


ほかにもたくさん問題はあるけれど、とりあえず今回はこのへんで。
ほとんど疋田氏の受け売りになってしまった。反省。
またそのうち、書くかもしれない。



ただ、結局一番の問題は、行政と日常生活に自転車を使っている人たちの多くは、
自転車は歩行者の延長
としか考えていないことかもしれない。


日常使いの範囲ではそれでもいいのだけれど、
「自転車促進」の中には、「自動車の代替」という考えもあるだろう。
そう思うなら、スポーツ自転車で5km、10kmの距離を乗る可能性や、
時速30km以上など、それなりの速度での利用を考える必要が出てくる。


”それなり”に使いたいなら、自転車は車両という意識は必要と思う。


そして、もうひとつ大切なのは、
自転車は(歩行者に比べると)交通強者で凶器になるということ。
それがわかっていたら、無灯火も、携帯や音楽プレーヤを使いながらの走行も、
飲酒運転も、スピード出しすぎも、猛スピードでの飛び出しもできないと思うのだけれど……


自転車が好きだからこそ、
みんなが幸せになって欲しいと願っている。
そして、せめて自分と家族だけは!と、安全運転に努める。
(山科)